東京高等裁判所 昭和32年(う)1629号 判決
被告人 高田清一
〔抄 録〕
控訴趣意第一点について。
数人共謀の上共同一体となつて犯罪を実行した場合において共謀したという事実自体は犯罪の実行行為に属せず、実行行為から見れば予備的なものであつて、時効や管轄に影響のない事柄であり、又、既に犯罪の実行があつた以上は、共謀者中、何人が直接実行の衝に当り、且つ具体的に如何なる実行行為を担当したかを問わず、共謀者全員が共同正犯の罪責に任ずべきものであるから、起訴状にかかる犯罪事実の訴因を示すについても、数人共謀の上、共同一体となつて具体的犯罪事実を実行した旨を、実行行為について犯罪の日時、場所、行為の態様を特定して記載すれば足り、敢て、共謀者の氏名、共謀の日時、場所、具体的内容、実行行為の担当者、又は各自の分担した実行行為の態様等の点までも明示することを要しないものと解するのを相当とする。本件起訴状には、公訴事実として「被告人は他一名と共謀の上、昭和三十二年四月十九日、午後一時頃、東京都千代田区神田龜住町十三番地先路上において(中略)洋服裏地(アルパカ)二反の梱包品一個時価九万六千七百五十円相当を窃取したものである」と記載しているに過ぎないことは所論のとおりであるが、罰条の記載(刑法第二百三十五条、第六十条)と相俟つて、被告人は他一名と窃盗を共謀の上、共同一体となつて右日時、場所において右洋服裏地窃取の実行行為をなしたものである旨を示したものであることを窺うに十分であり、その記載において実行行為の行われた事実、その日時、場所を明示して犯罪を特定している以上、共謀の点は自ら特定し、且つ右共謀に基き実行行為の結果につき共同正犯の刑責あることもまた明らかであつて、事実の特定、乃至被告人の防禦上の利益に欠けるところはないから、共謀者の氏名、共謀の日時、場所、共謀の具体的内容、実行行為の担当者又は、各自の分担した実行行為の態様等を記載しないでも、訴因の明示方法に違法があるということはできない。
(三宅 河原 下関)